バラの特徴
「花の女王」といわれるバラ。バラには多種多様な種類や系統があります。
本図鑑では、バラの系統から大まかに「オールド・ローズ」、「イングリッシュ・ローズ」、「クライミング・ローズ」、「ハイブリッド・ティー」、「シュラブ・ローズ」、「フロリバンダ」、「ミニチュア・ローズ」の7タイプに分けて解説しています。
オールド・ローズ
「オールド・ローズ」は名前の通り古くからある歴史的な品種群を指します。 1867年に作出された初のハイブリッド・ティー品種である「ラ・フランス」以前のバラを総称して指しますが、学術的に明確な定義があるわけではなく、便宜上の分類と言えます。
日本人に愛されてきたバラを現代に伝える貴重な品種です。
イングリッシュ・ローズ
イギリスの育種家デヴィット・オースチン氏が創り出した新しい系統のバラのことです。「オールド・ローズ」と「モダン・ローズ」を交配して作り出されました。
「オールドローズの優しい花形や香り」と「モダンローズの四季咲き性と耐病性」、両方の長所を持ち合わせているのが特徴で、初心者にも育てやすいバラといわれ、近年最も人気のある品種です。
クライミング・ローズ
「クライミング・ローズ」は、いわゆるもっともつるばららしい系統と言えます。品種の数も多く、様々な交配がされているのでその性質も様々です。はじめからつる性ばらとして作出された品種と、ハイブリッド・ティー品種やフロリバンダ品種などの四季咲きバラが突然変異によりつる性となった品種に大別されます。
いずれも1本の樹で艶やかに咲く品種です。
ハイブリッド・ティー
「ハイブリッド・ティー」は四季咲きの大輪1輪咲きの品種です。現代バラの切り花1輪咲きは、ほとんどこの系統になります。長い間先人たちが理想のバラを求めて交配を繰り返した結果、このハイブリッド・ティー(ローズ)が誕生しました。第1号は、「オールド・ローズ」の項でご紹介した1867年にフランスのギョー(Jean-Baptiste Guillot)が作出した「ラ・フランス」です。
四季咲きで大輪の花が咲くことが多い品種です。
シュラブ・ローズ
「シュラブ・ローズ」とは、広義では半つる性のバラを指し、狭義では半つる性のバラのなかの「シュラブ(モダン・シュラブ)」と呼ばれる系統を指します。枝を長く伸ばせば小型のつるバラとして利用でき、また、四季咲き性や返り咲き性の品種の多くは短く切り詰めて、ブッシュ・ローズのように仕立てることもでき、利用範囲の広いバラです。
強い香りを持ち、間断なく咲き続ける品種です。
フロリバンダ
「フロリバンダ」とは「花束」・「多花」の意。系統をたどると、最初に生まれたのが日本の野生種ノイバラとコウシンバラの交配でできたポリアンサ系です。そのポリアンサ系とハイブリッドティー系のバラを掛け合わせ、ハイブリッド・ポリアンサ系のバラが誕生しました。それが後に「フロリバンダ(ローズ)」と紹介され、世界中にその名前が知られる様になりました。「フロリバンダ」は中輪房咲きで多花、四季咲き性で長い間花を楽める特徴から、花壇やグランドカバー等のガーデン用としても重宝され、広く植栽されています。
四季咲きで中輪の花が咲くことが多い品種です。
ミニチュア・ローズ
「ミニチュア・ローズ」とは国原産のロサキネンシスの丈が低い変異種を原種とした、樹高が10cm~50cmほどの小型株のバラを指します。種類の多い四季咲きで、鉢植えやガーデニングのアクセント、室内のインテリアなどとして世界中で人気の高いバラです。開花時期が長い、
四季咲き性が最も強く、温度次第で冬でも咲くことがあり、初心者でも育てやすい品種です。
バラの花びらの枚数による分類
バラの花びらは最少5枚から、多いものでは100枚以上もつけるものもあります。あの小さなつぼみのどこにこんなに花びらを隠していたのかと思うほど、咲き進むごとにとめどなく花びらを展開する花もあります。バラの咲き方には、この花びらの枚数の違いで、大きく分けて次の3つの呼び方があります。
一重咲き
バラの一番少ない花弁数は5枚。5〜9枚のものを一重咲きと呼んでいます。つまり、一見して花びらの枚数が分かるような咲き方です。花心が見える咲き方をするので、花びらと花心のコントラストが美しいのも魅力。素朴で可憐な印象です。
半八重咲き
花弁数が10〜19枚のものを半八重咲きと呼びます。花びらがヒラヒラと、優雅な雰囲気で咲きます。
八重咲き
花びらの枚数が20枚以上の花を八重咲きと呼びます。ただしバラは20枚以上の花びらを持つ品種がほとんどなので、実際には八重咲きという呼び方はほとんど用いられず、さらに細かく咲き方の特徴を表現する言葉が用いられています。
バラを何種か植える時、花形の違いを意識して組み合わせると、お互いの魅力を引き立て合い、印象的なバラ風景を描くことができます。
バラの花形による分類
バラのネームタグや図鑑に「ロゼット咲き」「クォーター・ロゼット咲き」「カップ咲き」「抱え咲き」「高芯咲き」などの表現が登場することがあります。これらはすべて花弁数が20枚以上の八重咲きの花のことで、咲き方の特徴を細かく分類した言葉です。特に覚える必要はありませんが、一重や半八重の花ではなく、花弁数の多いバラの咲き方のことを指しているのだと思って頂ければ大丈夫です。以下に代表的な花形の特徴をご紹介します。
ロゼット咲き
花弁数が多く、芯が一つのものを指します。
クォーター・ロゼット咲き
花弁数が多く、芯が複数のものを指します。
カップ咲き
花弁数が多く、カップ状に丸いものを指します。
シャクヤク咲き
花弁数が多く、花びらが不規則に並ぶものを指します。
ポンポン咲き
花弁数が多く、球状に近いものを指します。
高芯咲き
芯が高くなる咲き方を指します。モダンローズと呼ばれる花に多く見られる咲き方の特徴です。
抱え咲き
渦を巻く芯が花弁の内側に低くなる咲き方を指します。
花のつき方(一輪咲きと房咲き)の違い
ここまでご紹介してきた通り、バラの花形にはさまざまな個性がありますが、バラには「花のつき方」にも違いがあります。花のつき方は次の2通りです。
一輪咲き
1本の枝の先に1輪、花を咲かせます。株の力が1輪の花に注がれるため、花が大きく豪華に咲きます。
房咲き
1本の枝の先に複数の花をブーケ状に咲かせます。株を覆うように花が咲きます。
一輪咲きは景色に抜け感があり、他のバラとの組み合わせも楽しめるメリットがあり、房咲きは一品種で豪華に空間を彩ることができます。どちらの咲き方にもそれぞれの魅力があるので、ご自身のお好みや空間の雰囲気に合わせて選ぶとよいでしょう。